5Sの経営的な意味
5S活動の重要性に異論を挟む人いない。しかし、5S活動は、単に職場をきれいに使いやすくするとか、安全な職場づくりということだけではない。
キャッシュフロー経営を推進する根幹となる活動なのだ。
真の5S活動の推進を図るには、経営層・マネジメント層が、「5S」活動の「経営的な意味」について理解しておくことが大切だ。
以下に、5S活動の経営的な意味と効果について解説する。
1.整理-要るものと要らないものを分け、要らないものを処分する。
⇒ 生産の現場や各職場には、現在の生産や仕事に必要なものだけしか置かれていない状況にすること。
⇒ 経営的には、B/Sの借方の資産を、真に今必要なものだけにすることを意味する。
言い換えると、資産圧縮した分だけ、キャッシュが増えることになる。
さらに、資産圧縮することでムダな資本コストを削減できることになる。
真の整理ができると、
- 今必要なものしかない状態にするので、大幅な棚卸資産の削減、固定資産の圧縮、簿外資産の圧縮を図ることができる。これら資産は、お金が「もの」になっている状態なので、資産圧縮により、ものがお金に換わり、キャッシュを生み出すことができる。
また、長期滞留資産がなくなり廃棄ロスもなくなる。 - 大きなスペースが生み出せる。
今必要なものだけになるので、驚くほどスペースが空くことになる。生産現場であれば、再レイアウトすることで物流ロスや動作ロス等が無くせるのみならず、新たな建物投資しなくても十分な増産体制が築けることにつながる。 - 今必要なものしかない職場であれば、間違った部品や工具を使うことはなく、また間違った書類を見ることはないので、ミスはなくなる。
さらに、今必要なものしかないので、見通しの良い職場となり、安全な職場に変わる。
2.整頓-必要なものを必要なときにすぐに取り出し使える状態にする。
⇒ どこに(定位置)、何が(定品)、いくつあるか(定量)が決められ、表示・標識により一目でわかり、すぐに取れる状態にすること。
⇒ 経営的には、B/Sの借方の資産を健全に保つと共に、ムダな資産を増やさない仕組みができるということ。
真の整頓ができると、
- 標準の動作で、作業・仕事ができる。…すべてのものの位置が定位置化されるので、標準作業・標準時間が決まる。…原価管理の基本ができる。
- 異常が見える。…ものの有り無し、どこのものかがわかると共に、補充タイミングや補充必要量が一目でわかる。ムダな資産を増やさない仕組みができると共に、ルール違反が一目でわかる。
- 健全な資産管理ができる。…いくつあるかが一目でわかる職場になる。先入先出で資産の鮮度管理。持ち過ぎなし・欠品無しの資産管理ができる。
棚卸作業の短時間化と共に、棚卸差異(違算)も減らせる。
3.清掃-ゴミなし汚れなしの状態にする。
真の清掃ができると、
- 機械の油漏れ、配線被覆の破れ等が発見でき、早期のメンテナンス対応で設備トラブルなしにつながる。
- 製品のキズや汚れの発見レベルが上がり、品質向上につながる。
- 会社の信用が高まる。
5S活動の中でも、基本となる3Sができるだけで、キャッシュフロー経営の基本となる資産圧縮と資金の良化、効率のアップ、健全な資産管理、さらには自ら異常に気付き改善が進む職場に変えることができる。
逆に5Sが出来ていない企業は、資本コストを意識することなく、ムダな資産に貴重なお金を使い、キャッシュを生み出すどころか、廃棄するリスクにも気付けていない、経営不在の企業ということだ。
先ずは、5S活動の重要性を認識して、全員で真の5S活動を実践することが大切だ。
まさに「経営力は5Sの状況を見ればわかる」ということなのだ。