海外子会社の経営管理

日本国内は人口減少で成長が難しいことから、多くの企業が、海外を成長エンジンに位置付けている。

海外拠点の増加・拡大と共に、海外子会社の管理が重要になるのだが、適切な経営管理ができていない例は多い。

管理すべきことは適切か

どの企業も、海外子会社の経営数値や品質状況については、毎月確認している。

しかし、適切な管理事項になっていないことから、問題に気付けず、改善が進まないケースは多い。

例えば、売上高と利益しかチェックしていなかったらどうなるだろう。それが計画を達成できているので問題ないと思っていると足元をすくわれることもある。

実際、利益が出ているのに資金が回らないという事態に陥り、現地の金融機関から貸出にあたり親元保証を要請されて、初めて多額の滞留債権を抱えていることに気づいたという例もある。

経営管理の基本はキャッシュフロー

キャッシュフロー経営の基本がわかっていれば、管理すべき事項もわかるはずだ。

売上高と利益しか報告させていなければ、お金は意識しなくなるが、毎月未回収になっている滞留債権の管理シートを報告させれば、日頃から回収管理を意識して徹底するのが当たり前になるはずだ。

同様に滞留在庫も定期的に報告させることは有効だ。在庫はお金が物になって寝ているだけでなく、滞留化すれば、陳腐化し廃棄につながる。

さらに在庫金額についての管理も有効だ。運転資金の圧縮によるキャッシュ創出と共に在庫が減ることで付加価値を産まないスペースも削減でき、ムダな運搬ロスも減らすことにつながる。

何を管理すると、どうキャッシュの増につながるかがわかっていれば、管理すべき事項もわかるはずだ。

先手の推進管理

さらに、結果の決算では間に合わないので、先手で資金や利益の見通しを出し、事前に対策を打つ仕組みを作ることも大切だ。

2カ月先、3カ月先の見通しを報告させることで、計画達成のために事前にどう対策するかを検討するのが当たり前にすることが大切だ。

何が原因で未達になりそうなのか。達成するために何を推進しようと考えているのか、また、計画未達になっている場合は、どうリカバリーしようと考えているのかを報告させることだ。

こうすることで、子会社自らが計画達成に向けての推進ができるようになる。

計画に対する行動決算も

事業計画や中期計画は、単なる数値目標を記したものではない。

経営戦略を踏まえ、それを実現するためにやるべきことを示したものであり、それを計画的に実行することが重要だ。

そのためには、各海外子会社が、やるべき事項を適切に推進できているかも管理する必要がある。計画した行動計画に対する進捗管理も重要だ。

安定した経営推進を図るために重要な人の管理

経営推進する上で、最大の経営資源は人だ。

アイデアを出すのも人であり、その推進をするのも人だ。それだけに、人材育成と共に人の定着が重要だ。

実際、離職率が高いとどうなるだろうか。

製造業なら、作業方法を指導し、正しく作業できる頃には退職というような事態になっていれば、安定した品質は確保できないし、生産性も悪く、間違いなく業績は悪化する。

業績が良くない拠点は、離職率が高いケースが多い。

それだけに、離職状況やキーとなる人材の状況は日頃から管理しておくことが重要。

また、従業員から信頼される拠点責任者かどうかで、このあたりは大きく違ってくるので、拠点責任者を評価する指標の一つにもなる。

配慮すべき点…出向者は連絡係ではない

各海外拠点に、管理すべき事項について報告を求めることは必要だが、あまりに細かく、多頻度で報告させるというのは問題だ。

海外拠点も一つの独立した経営体であり、出向者の業務範囲は広く、多忙なことが多い。

実際、グローバル化が遅れている企業は、日本の各部署からの指示がローカルの部門責任者ではなく、すべて日本人出向者に、しかも日本語で指示してくることがある。

このような事態になると、出向者は日本との連絡係となってしまい、本来の仕事ができなくなる。

また、週報や月報など、次から次へと報告を求められると、週報や月報を書くのが仕事になってしまう。

このようなことにしないためには、報告させる事項は、これだけは管理すべきという事項に絞ることが大切だ。

キャッシュフロー経営の基本を踏まえ、真に管理すべきことは何か、整理をしてみてはどうだろうか。

 

(関連サイト)

※キャッシュフローとは

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※お金を知らずに経営はできない