情報を集める・知恵を集める
成長している企業、顧客満足度の高い企業の多くに共通するのが、情報や知恵を集めることができているということだ。どれだけ集めることができたかで、結果は大きく変わる。
情報や知恵が集まれば、適切に問題を把握できるし、より優れたアイデアを創出できる。他社に勝る改善、新たな技術開発や商品開発、新たな販売先の開拓、顧客満足度の向上につながる。また、スピードや効率という面でも大きな差が出る。1人でどうしようかと悩んでいても時間ばかりかかるが、皆から知恵をもらうことで早期により良い方法を見つけることができるからだ。
躍進する企業、またスピードのある企業は、概して意識して情報や知恵を集めており、それを活用することがうまい企業なのだ。
意識しないと情報や知恵は集められない
ところで、情報や知恵は意識しないと集めることはできない。
実際、新たに海外進出しようとする企業であれば、現地の情報をどれだけ把握できているかで成否が決まる。すでに進出している企業に、どのような点に注意が必要かを聞いて回り徹底して情報収集した企業は、現地で適切に対応ができているが、そうではない企業は問題にぶつかる事態になっているケースが多い。
すなわち、情報や知恵を集めることの重要性を経営陣が認識し、それを集める体制や仕組みを作ることが大切なのだ。
日本生産性本部が定期的に各業種別の顧客満足度指数を発表しているが、この中に17年連続(2025年の調査時点)で顧客満足1位を獲得している企業がある。ヤマト運輸だ。
実際、宅配便を使う顧客として、同業のS社と比較して見ると、大きな違いがある。
例えば、問い合わせ一つも、ヤマト運輸は、サービスセンターがフリーダイヤルで21時まで受け付けてくれる。情報は一カ所に集約されると共に配達時間中は顧客対応できる体制を作っていることで、問題の把握もでき全社的な改善も進めやすい。
それに対して、S社は各配達担当の営業所が窓口で19時までしか受け付けはしない。夜8時までの配達指定をしていて届かず問い合わせをしようとしてもできないし、窓口は配達担当営業所なので、全社的な問題の共有化はできず対応もできない。当然のことだが、改善は進まず、同じような問題の再発にあきれることさえある。
また、ヤマト運輸は、新しい人が配達に来ると、適切な配達対応ができたかの調査がくるので、すぐに改善される。
17年も連続で顧客満足1位を獲得している企業は、コストをかけて情報を一元的に集める体制を構築していると共に、自ら情報を集める取り組みをしており、それが改善につながり、高い顧客満足を得ることにつながっていると言える。
情報や知恵をどう集めるか
どれだけ質の良い適切な情報を集めることができるかが、経営判断する上で鍵となる。また、戦略の構築も新たな開発なども、実現に向けてどれだけ知恵を集めることができるかで成否が決まる。
そのためには、どうすると情報や知恵が集められるかがわかっている必要がある。また、より適切な情報を集約するためには、コストをかける必要があることも理解すべきだ。
前述したヤマト運輸の例であれば、電話代やオペレーターの費用を負担して、問題を集約する体制を築いている。それに対して、S社は受付時間も短く、電話代は顧客負担。コストをかけてでも情報を集めることの重要性を認識できていないので、改善は進まない。
発信しないと情報や知恵は集まらない
情報や知恵を集めるには、集めようと意識しなければ集まらないし、集める行動をしないと集めることは難しい。何もせずに待っていて、誰かが素晴らしい情報や知恵を持ってきてくれるというようなことは皆無だ。
そのためには、自ら発信することが重要だ。
「こんなことに困っているのだが」と言って初めて、「そういうことなら…」というようにその人が持つ情報を提供してもらうことができる。何も発信しなければ教えてくれる人などいない。
すなわち、情報を集めるためには、何をやりたいと思っているのか、どんなことに困っているのかを発信することが重要なのだ。
それを発信することで、初めてそれを聞いた取引先や関係先、従業員がそれに関する情報を提供できることになる。
情報開示してこそ情報や知恵が集められるのだ。
実際、どこに聞くと情報やアイデアが得られるのかわかっていないこともある。
どこが情報やアイデアを持っているかも、発信することで情報源になりそうなところを教えてもらえることになる。
自らの取り組みを発信したことで、研究機関から問い合わせが来て、共同開発を進めることになったという例もあるが、これは、こんなことに取り組んでいる、取り組もうとしているという情報開示したことによる成果だ。
質の良い情報や知恵をどれだけ集められるかが変化の激しい経営環境の中で生き残る道だ。そういう意味では、自ら積極的に情報開示をして、皆の知恵や力を借りる姿勢が大切だ。
自分の仕事で行き詰った時も、皆に知恵を求めることで突破できることが多い。
情報や知恵を集める取り組みができる体制、また、「衆知を集める」風土を醸成することが事業を成功に導く基本なのだ。

