減価償却費とは

減価償却費は、設備などの固定資産の費用を使用期間で配分するものだが、単に費用配分だけではなく、適切な資産価値、投資回収という意味がある。

減価償却費の持つ3つの意味

費用配分という意味

一つ目の意味としては、費用配分という意味がある。

もともと固定資産は、長期に渡って使用する資産だ。従って、使用期間に渡って費用計上していくというのが、基本の考え方だ。

例えば、3000万円で購入した設備を初年度ですべて費用計上し、翌年以降は使用費用はゼロというのはおかしいからだ。

すなわち、減価償却費は、設備等の固定資産を使用期間で費用配分したものということだ。

ちなみに、減価償却の方法には、定額法(毎期一定の額を費用計上する)や定率法(一定の率を掛けて費用を算出する)があることはご存じの通りだ。

資産価値という意味

二つ目としては、資産価値という意味がある。

設備などの固定資産は、B/Sの借方に資産として計上する。

この資産の価値は、時間が経過するほど下がる。いつまでも、新品の価格で売れるということはないので当然だ。

すなわち、資産の評価は、減価償却した分だけ価値が下がるということであり、もし、適切に減価償却されていないようだと、資産価値が下がっているにもかかわらず資産価値があると評価していることになってしまう。

健全なB/Sという視点からも適切な減価償却は重要なことと言える。

資金回収という意味

三つ目の意味は、資金回収という意味だ。

減価償却費は、費用計上するが、実際にはお金が出ていく訳ではないので、その分お金は残ることになる。(お金が出ていくのは、実際に設備などを購入した際にお金の支払いをした時であり、減価償却費を計上した時ではない。)

すなわち、減価償却費は投資した資金の回収という意味があるということだ。

過少な減価償却はお金を減らすだけ

営業キャッシュフローは、利益と運転資金増減に減価償却費を加えて求める。

利益を増やすために過少な減価償却費にしているケースを見かけることがあるが、この営業キャッシュフローの計算式からもわかるように、減価償却費を少なくして利益を増やしてもお金は増えないということだ。

それどころか、利益を増やすことで余分な税金を支払うことになり、お金は減ることになる。

これらのことからもわかるように、投資回収、キャッシュフローという意味からも適切な減価償却が大切なのだ。

投資枠の判断基準にも

ところで、経営計画を策定する際に、投資枠を判断する基準として、減価償却費を一つの目安にするとよい。

営業キャッシュフローは、利益と運転資金増減に減価償却費を加えたものだと述べた。

この営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたものをフリーキャッシュフローと呼ぶが、事業を進める上で大切なことは、フリーキャッシュフローをいかにプラスにするかだ。

フリーキャッシュフローがプラスであれば、借入金の返済や配当等と共に、将来に向けた戦略投資の原資にすることができる。逆にマイナスであれば、資金が不足することになるので、借入や増資等、不足分を調達する必要に迫られる。

従って、経営を担う上では、何としてもフリーキャッシュフローをプラスにする必要があるのだが、投資を減価償却費の範囲にすれば、運転資金増減が変わらなければ、利益分をフリーキャッシュフローとして残せることになる。

戦略的な投資は別として、日常の経営における投資枠としては、減価償却費を一つの目安にするとよいということだ。

 

費用計上するものは色々あるが、減価償却費は、他の費用と異なり、このような3つの意味がある。適切な減価償却で健全経営を心掛けていただきたい。

 

(関連サイト)

※減損とは