経営幹部が心がけるべきポイント
キャッシュフロー経営に徹する
経営の基本は、株主や金融機関から調達した資金及び自ら稼いだお金(B/Sの貸方)を、資産(B/Sの借方)に換え、その資産を使ってより多くのお金を生み出すことだ。
すなわち、いかに少ない元手でより多くのお金を生み出すことができるかが経営の基本だ。
企業価値はその企業が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフローを現在価値にして求める。このことからもわかるように「どれだけキャッシュを生み出せるか」が経営の鍵なのだ。
生みだしたキャッシュは、借入金の返済や配当の支払いと共に、新たな成長に向けた投資原資になる。
企業を発展させていくためにも徹底したキャッシュフロー経営の推進が求められるということだ。
「そのお金の使い方は適切か?」を常に考える
ポイントは、「それにお金を使うと、新たなお金を生み出すことができるか」を、常に意識して考えることだ。
例えば、お金を在庫や売掛金などの運転資金に使ってもお金は増えない。
借金までして調達したお金を在庫や売掛金に使えば、その分の金利を支払うことになる。
現場のメンバーが、在庫を見たら、ここには金利がかかっているという感覚を持つことが大切であり、それを意識できれば、在庫の削減や売掛金の圧縮などへの取り組みも加速するはずだ。それが意識できるようにするのは経営幹部の役割でもある。
投資回収を意識する
設備投資であれば、その投資によってどれだけお金を生み出すことができ、いかに早く投資額以上のお金が回収できるかが判断基準となる。
赤字だと投資回収はできない…減損に
設備などの投資は、基本は減価償却費(費用計上するが実際にはお金は出ていかない)で回収できるが、その事業が赤字だと得られるキャッシュフローは減価償却費を下回り、投資回収できないことになる。
そうなると、回収可能額まで資産価値を減額する必要があり、これが減損だ。
減損は投資を失敗したことを示すものだ。
それだけに、投資の際は投資回収できるかの確認が重要であり、また減損を免れるには営業利益は黒字にしなければならないということだ。
健全なB/Sにすること…減損を恐れるな
経営幹部は、常に健全なB/Sにするということを意識することが大切だ。
滞留資産も固定資産も資産価値がないのに価値があるかのように見せてはならない。
滞留資産の廃棄や固定資産の減損は、利益が減ることになるが、お金が減る訳ではない。それらはすでに以前購入したものであって、廃棄しても減損しても新たにお金が出ていく訳ではないからだ。
逆に利益が減ることで、支払う税金が減るため、その分お金は増えることにもなる。
経営者は、減損を恐れず、正しい資産評価、健全なB/Sを心がけることが大切なのだ。
プライム市場上場企業でも不適切な会計処理が発覚した例がある。
経営幹部がキャッシュフローを理解せず、指示された利益を確保するために、資産評価を誤魔化したり、減損すべきにも関わらず誤魔化して減損回避することで利益を出していたという例だ。
実際、利益だけを増やそうとすれば、売れもしないのにどんどん生産して在庫を積み上げれば利益は増える。しかし、このような利益の出し方はキャッシュを減らすだけだ。
経営幹部が、キャッシュフロー経営に徹していれば、キャッシュを減らすような利益の出し方は絶対にしないはずだ。
経営幹部は、キャッシュフロー経営に徹すると共に、常に健全なB/Sにし、「正直経営に徹する。絶対に不正はしない、させない。」という姿勢が大切なのだ。
赤字商品・赤字事業・赤字拠点を放置するな、逃げるな
自社の中に、赤字商品や赤字事業、赤字拠点を放置していないだろうか。
経営していると一時的に赤字になることはあるが、慢性的に赤字になっている商品や事業、拠点があることは大きな問題だ。
それを指摘すると、「赤字を無くすように指示している。皆で黒字化に努力している。」と言われることが多いが、はたしてそれでよいだろうか。
この背景には、「お客様があるのでやめられない」という大義名分が言い訳として見え隠れする。「やめる」というより、「黒字化すべくがんばります」という方が楽という本音もある。
いつまでも赤字になっている事業や拠点は、長年努力してきても赤字なので、簡単に黒字化は難しい事業だ。これらの事業は、たとえわずかに黒字化できても、資本コストを上回る利益を確保できないことが大半。継続すればその事業の赤字が、他の事業で稼いだ利益を食い潰すだけだ。
大切なことは、赤字を継続しないということであり、それができないなら「やめる決断をする」ことだ。
やめると決断し、その事業にかける経営資源を成長が見込める事業に振り向けるのが経営だ。
やめると決めてもすぐにやめることは難しいので、どのようにやめるのか、やめるためのステップを具体的に検討することが大切なのだ。
経営戦略を描く
また、やめるだけではジリ貧になるので、新たにキャッシュを生み出すことができる事業にシフトすることが大切であり、そのような事業の創出や拡大に取り組む必要がある。
このように、事業構造をどのように変革するのかを明確に示すのが経営戦略だ。
「やめる」という決断の遅れは、新たな事業の創出・開拓や、伸ばすべき事業拡大取り組みの遅れにつながる。
経営環境の変化を踏まえ、M&Aも含めて事業構造変革シナリオを描くことが大切だ。
ブレない判断基軸を持つ
日頃から色々な局面で判断を求められるのが経営幹部だ。
大切なことは、絶対に後ろ指を指されることの無いように、ブレない判断基軸を持っておくことだ。
それは、すでに述べたキャッシュフロー経営に徹することであり、コンプライアンス遵守…法令や社会規範は絶対に守ることだ。
経営では、利益を出す責任があるのは事実。しかし、前述したように、やってはならないやり方で利益を出すとお金は減る。
お金は正直だ。正しい利益の出し方ならお金は増える。お金が増えない利益の出し方はやってはならないやり方と心得ることが大切なのだ。
また、顧客との約束は守ること。勝手な判断はしないこと。判断に迷ったら顧客に聞くこと。約束を破れば取引は無くなる。上場企業でも品質不正問題などが報道されるが、このような事態になれば長年に渡って築いてきた信用は一度に崩壊し、経営基盤を失うことになる。
同様に、優先順位を間違ってはならない。
「品質第一、安全第一」という掲示を見たことがあるが、これではどちらが本当の第一かがわからず、このような職場では事故は無くならない。
優先順位は、安全第一、品質第二、生産第三だ。
経営幹部は、優先順位をしっかり認識して、判断・指示する必要がある。
ブレない判断基軸を持って、判断・指示していただきたい。

