海外事業を成功させるポイント・・企画の現地化
国内での成長が難しいこともあり、多くの企業がグローバルでの事業拡大を図っている。それに伴い、「意外に多い海外拠点の立ち上げ失敗」のコラムでも述べたように、海外事業で躓いている企業も多い。
例えば、提供する商品やサービスが、現地ニーズに合っていなければ、事業そのものが成り立たない。
誰に、どんな商品を、どのように売るのか
海外で事業を成功させる第一のポイントは、誰に、どんな商品を、どのように売るのかが適切に計画できているかだ。
部材メーカーなどのB to Bの事業であれば、事前にターゲット顧客を明確にし、その企業と事前に商談をすることで、何をどのくらい販売するかを決めることが大切だ。
もっとも、顧客企業に依頼されて進出する場合は、顧客企業の計画の妥当性をチェックすることを忘れてはならない。
B to Cの事業の場合は、販売しようとする商品やサービスがターゲット顧客のニーズに合っているか、また求められる要求品質を事前に把握する必要がある。
文化も環境もニーズも異なる
日本で生産している物がそのまま通用するというケースは意外に少ない。
食に関する分野であれば、食文化が違うこともあり、求められる味や食感は違うし、耐久消費財であれば、機能やデザインと共に品質基準も変える必要がある。
文化も環境も異なることからニーズも使い方も異なるのは当然だ。
例えば、洗濯機は日本では衣類についた汗や汚れを落とす目的で使われるが、国や地域によっては、泥だらけの作業服を洗う目的で使われることもある。泥や砂が入るということは、洗濯槽の中に「やすり」を入れて回すことと同じなので、汚れを落とすことを基準に設定された日本の耐摩耗性の基準では市場不良が多発することになる。
どんな使い方をされるのか、どんな機能が要望されているのかをしっかり把握し、現地のニーズに合った商品・品質にすることが事業を成功させる前提になる。
さらに競合商品がある場合は、競合商品と比較して自社の商品を選んでもらえるものにする必要がある。
市場動向や顧客ニーズの把握、競合他社の戦略などを調べ、具体的にどんな商品・サービスを提供すべきかアイデアを出すには、現地の文化や環境を熟知している必要がある。
現地事情を知らない日本人が、これを行なうのは、かなりの困難さを伴う。
それだけに、先ずは、企画の現地化を図ることが成功の鍵と言える。
企画人材の育成
ところで、商品やサービスの企画ができる人材の育成は、日本国内でも体系的にできているケースは少ない。
海外でそれを実現するためには、先ずは、新たな商品やサービスを生み出すことに興味を持っている人材を採用すると共に、商品企画をする上で必要な知識や技能を習得させる必要がある。日本に企画部門などがある企業であれば、そこで事前に学ばせることも有効だ。
市場動向や市場マップのまとめ方、ターゲットとする市場や顧客に対する競合分析、市場調査のやり方などは、容易に教えることは可能なはずだ。さらに、アイデア発想法や、アイデアを膨らませたり、評価するためのグループインタビュー、ブレーンストーミングのやり方なども習得させておくとよい。
これなら売れると自信が持てる商品案を作り上げることが重要だ。
3W1Hを明確に
その上で、ビジネスモデルの構成要素である3W1Hを明確にして企画案を作る必要がある。
「誰に」(Who)、「何を」(What)、「どのようにして」(How) 売り、それによって、なぜ(Why)利益が獲得できるのかを明確にすることだ。
とりあえず、日本の今の商品やサービスをそのまま現地に持ち込んで通用するか確認しようとする企業もあるが、その前に、このような商品やサービスに対して、ニーズがあるか、どうすると真に喜ばれる商品にできるかをしっかり調査・確認することが、海外事業を成功に導くためには重要だ。
現地ニーズに合わない商品やサービスは、どれだけ販促策を展開しても売れないし、ブランドイメージを損なうだけで、絶対に成功しないからだ。
先ずは、企画の現地化に取り組むことが海外事業を成功に導く第一歩と言える。

