企業価値と株主価値
フリーキャッシュフローが企業価値を決める
「キャッシュフローとは」のコラムで、事業を進める上で一番重要なのがフリーキャッシュフローだと述べた。これは、実際にその事業で生み出したお金だからだ。このフリーキャッシュフローが、借入金の返済や配当の原資、さらには将来の成長に向けた投資原資になる。
キャッシュを創出する力が低ければ、キャッシュフローで裏付けられる債務返済能力や事業へ継続的に投資する力がないということになってしまうので、フリーキャッシュフローが、その企業の企業価値を決めるもっとも重要なバロメーターということになる。
企業価値と株主価値
ところで、企業価値はどのようにして求められるのだろうか。それは、その企業が将来的にどれだけのキャッシュフローを生み出すことができるかということで決まる。すなわち、将来的に生み出すフリーキャッシュフローを現在価値にして算出するということだ。ちなみに、現在価値については、「投資の可否判断」のところでも述べた。
その企業価値から、負債を引いたものが株主に帰属する価値=株主価値ということになる。
いかに株主価値を上げるかということを株主からは求められるが、このためには、徹底して企業価値を上げる=フリーキャッシュフローを最大化すると共に、借入金の返済などで負債を減らしていくことが重要になる。
フリーキャッシュフローを最大化するには、より高い利益を上げると共に、運転資金の圧縮と、より少ない投資で多くのお金を生み出す(投資効率を高くする)ことがポイントになる。この取り組みは、資産圧縮によるB/Sの借方をスリムにすると共に、B/Sの貸方は利益の増加と借入金の返済で自己資本比率を高くするということを意味する。
事業価値について
ところで、どの企業もいくつかの事業を展開している。この事業は続けるべきかやめるべきか常に判断を求められるのが経営だ。
事業の中には、高い利益を上げている事業もあるが、利益が出せていない事業もあるはずだ。また、利益は出ているものの毎年多額の投資が必要になるという事業もある。
そのような時の判断基軸が、事業価値があるか否かだ。
事業価値は、企業価値と同様、その事業が生み出すフリーキャッシュフローの現在価値の合計で求められる。
ちなみに、事業別にB/Sが分割されていないケースがほとんどなので、簡易的にフリーキャッシュフローを算出して判断すればよい。すなわち、運転資金の増減は無いという前提で、各事業の税引き後の利益に減価償却費を加え、そこからその事業に必要な投資額を引いて簡易的にフリーキャッシュフローを求めるということだ。
経営者に求められること
これらのことからわかるように、経営者に求められることは、いかにフリーキャッシュフローを最大化するかということに他ならない。
どうすると、企業価値を高めることになるのか、また、株主価値を高めることになるのか、このことが理解できていれば、具体的にどのような取り組みをする必要があるかもわかるはずだ。
キャッシュフロー経営に徹することが大切ということだ。
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