海外でよくある問題
日本国内は人口減少を背景に国内需要の拡大は難しい。それを踏まえ、多くの企業が海外事業を成長エンジンに位置付けている。
しかし、海外での事業展開は日本国内とは事情が異なることから、予期せぬ問題に直面することは多い。
海外進出の際も、海外に出向する際も、どんな問題が発生する可能性があるかを理解し、事前に対策することが大切だ。
ここでは、海外でどんな問題が発生しているかを列記する。
不正問題
もっともよくある問題の一つが不正問題だ。
これらの中には、出向者が気付いておらず既得権になっている例も多い。
実際、発注者と検収者が同一ならいくらでも不正はできる。また、不正も権利と思っているケースさえある。窓口責任者が取引条件として取引先にお金を要求しているケースもある。不正を発生させない仕組みを確立することが大切だ。
盗難問題
盗難はどこでもある問題だ。
倉庫にある商品が盗まれたり、トラックに積まれた商品がトラックごと盗まれるケースもある。また、計測器など比較的高価で金になる物が盗まれるなど盗難は多い。
監視カメラを設置したり、出入りする際に守衛が車のトランクを開けさせてチェックしている企業は多いが、盗難はあるという前提での対策が重要だ。
また、財布やパスポートを盗まれたり、ひったくりにあうことも多い。どのような手口で盗まれるのかを知ることで対策も可能だ。
労働問題
ストライキをはじめとした労働争議で悩まされることは多い。
着任早々、ストライキの洗礼にあうこともある。
現地事情を知らなかったり、労働法を理解していないなど、出向者側に問題があることも多い。
労働争議への対応方法も含めて、事前の理解が重要だ。
安全問題
多いのは交通事故だ。
ラマダンシーズンで運転手が体調を壊して居眠り運転したり、安全教員が徹底できておらず無謀な運転で事故にあったりするなど、適切な対策が打たれていないケースも多い。
また、国によっては強盗にあうケースもある。強盗にあわないように通勤コースを変更したり、停止しないような運転をするなどの対応も重要だ。あわせて、万一の場合の対応方法も事前に勉強しておく必要がある。
また、スクラップ処理などに反社会的な組織が関わっているケースもあり、それを知らずに下手な対応をすると危険にさらさせることもある。
ローカルメンバーから現地の実態を踏まえて、どうすべきかを教えてもらうことも大切だ。
洪水や火災などの災害
進出する際に、洪水などの災害リスクについては事前に調べているはずだが、十分調べられていないケースは意外に多い。
また火災についても同様だ。暑い国だと、ねずみも巨大で、電線を噛みちぎることもある。
事前に非常時の対応体制や対応方法を決めておくことが重要だ。
実際、洪水で水没した拠点では、日本人は何もできなかったという例は多い。舟の手配も潜水夫の手配も日本人ではできないからだ。現地ローカルメンバーと共に、リスクを明確にして、いざという時にどうするかを決めておくことが重要だ。
併せて、利益保険も含め、抜けなく保険の付保をすることだ。
物流問題
海外拠点の場合、自国だけで調達・生産・販売を完結している拠点は少ない。海外から部材を調達したり、日本を含めた海外に販売したりしている拠点が大半だ。そうなると、物流が停止すると生産販売ができなくなり、長期に渡ると経営危機を招くことにつながる。
以前、コンテナ不足問題などもあったが、港湾のストライキや、運河の閉鎖、空港の閉鎖など、常に状況を把握・予測できるようにしておくことが大切だ。
必要に応じて、在庫の積み増しや出荷の前倒しなどの対応で被害を少なくすることは可能だからだ。
政変
政権が安定していない国では、突然クーデターがおきることがある。多いのは、軍隊が政権を握るケースだが、これらは予測できないことが多い。どれだけ迅速に適切に情報をえられるかが重要となるので、大使館情報などと共に、近隣の企業やローカルからの情報などの入手につとめ、対応方法を検討することが大切だ。
回収問題
経営を揺るがすことになる問題として多いのが、回収問題だ。売掛金の回収が予定通りできないと資金ショートに陥り倒産の危機に直面することもある。
金利の高い国では、優秀な経理責任者はいかに支払わずに済ませるか、いかに支払いを遅らせることができるかだと言う人さえある。金利差だけでも大きいので当然だ。
与信管理と共に、いかに早期に回収する仕組みを作るか、また、与信限度枠の設定をはじめ、回収管理の徹底が大切だ。
税務問題
税務調査を受けて多額の追徴という事例は多い。特に、移転価格税制については子会社だけではなく親会社がよく理解しておく必要がある。また、合算課税についての理解も大切だ。
国によって税制も異なるので、出向者はそれらを理解しておく必要がある。
生産停止
生産が停止する原因には、前述したような火災や水害といった災害、労働争議・ストライキ、反日運動等による妨害、感染症の蔓延、調達先のトラブル、政情不安や港湾スト・政策的な輸出入規制などで調達や出荷ができないなど色々な要因がある。
日頃から、生産停止にならないようにするには、適切な情報収集と共に、予兆に対して迅速な対応が大切だ。
長年現地にいる情報通と言われる人は、これらの対策に長けている人もいる。それらの人から教えてもらうことも有効だ。
変化点を理解して対策を
上記は問題の一例だが、これら以外にも、日本と進出国との環境の違いに起因した品質問題や、模倣品問題をはじめとした知財問題、コロナやSARS・インフルエンザなどの感染症問題など、色々な問題がある。
いずれも、これらを理解して事前に対策するためには、進出国の情報を入手し、日本と進出先の国では、何が違うのかを理解し、その変化点に対して、適切な対策をとることが大切ということだ。